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ロビーに置かれたいくつもあるソファのうちの1つ、一人掛け用のそれは、ピアノから少し離れた場所にあった。
そこからは、ちょうど弾いている佐伯の顔が真正面に見えた。
お礼を言って、少し戸惑いながらもそこに座る。
じっと見つめる先の、佐伯。
どこからどう見ても、今、私の目に映る佐伯は高校生じゃない。
ピアニスト、だと思う。
クラクラした。
惹き付けて止まないその音に。
華麗で繊細なテクニックに。
そして、時折こちらによこす、普段は決して見せない甘く切なげな視線に。
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