* カノジョの品格

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『…んなケーカイすんなって。』 「……。」 那智さんのクスッと笑う声が聞こえたけど、私は何にも言えなかった。 電話を切ってからも、何だか重い気持ちで身支度を整え、玄関の外に出た。 ふうっと空を見上げた所で、那智さんの車が目の前に停まった。 窓から見た那智さんの顔は割とフツーそうに見えた。 おずおずと眼鏡の位置を直しながら、助手席に乗り込む。 「…オネガイシマス。」 ぎこちなく言ったら、ぶっと那智さんが吹き出した。 「今まで言ったこともないクセに。」 けど私は笑うこともできずに、ビミョーな表情を浮かべただけだった。 「腹減ってない?何か食った?」 那智さんの部屋に入ってすぐに、那智さんが尋ねて来た。 「…や、…大丈夫です。」 「何か食ったの?」 「…食べてないけど。」
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