―序章―

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思ったよりも外は寒かった。 春の訪れはまだまだ先のことか...と、確認するように空に向かって息を吐いた。 白いもやは見えない。 なるほど...本当は、そんなに寒くないのかも知れない。 寒いと感じたのは、ある意味、精神的な要素が加わってのことなのだろう... そう思い直した中野太一は、手のひらを擦り合わせながら、出てきた扉へと振り向いた。 自動ドアに貼ってあるポスターが目に止まる。 "きっと見つかる明るい未来" まさしく職業安定所らしい、キャッチコピーだ。 そこには、いかにも好青年というような男が拳を握りしめて写っている。 何が明るい未来だ...ふざけやがって。 .
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