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時代が侍を滅ぼすのだ。
江戸の街、最後に会った山岡が寂しげにそう呟いた。
まだ、俺達がいる。いつもなら、真っ先にそう反論しそうな近藤ですら、その言葉に目を伏せただけだった。
全てが、時代の流れだった。
京の白刃を潜り抜け、幾度となく死線を越えてきた仲間も、いまはもう無かった。
永倉が去り、原田が消えた。新撰組の象徴だった近藤は処刑され、全ての隊士から畏怖された沖田も、もうこの世にはいない。
それでも自分が戦っているのは、時代を惜しんででも、まして幕府に殉ずるためでもなかった。
俺達はここにいる。
狂乱の時代に生き、戦い抜いた新撰組はまだここにいる。
未だに京の残滓を引きずり、それでも戦っているのは、新撰組は時代に飲み込まれてなどはいない。ただ、そう言いたいからだった。
しかし、その悪あがきも終わりを告げようとしていた。
函館五稜郭。
踏みしめた床が、ぎしりと悲鳴を上げた。
西洋風の廊下の悲鳴に、歳三は一人、くつくつと笑った。
最新鋭と言われていた五稜郭でさえ、老いているのだ。幕府が朽ち果てたのも必然だったのかもしれない。
身が裂けるような夜の寒さの中、歳三は本営が置かれた部屋の扉をくぐった。
二人の男が、歳三を待っていた。
総裁榎本武揚、陸軍奉行大鳥圭介。
煌々と光るランプのしたに、その明るさとは対照的な陰鬱な表情を浮かべていた。
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