第十五幕 九十九

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「じゃあ、あなた達は……どうしてこの家で人を驚かしていたの」 話を聞く限り、これは桜井氏が言っていた予想とは大きく違っている。 でも、まだ確信はできない。この家で桜井氏の祖父と共存していたというのなら、だったら何故。 「お祖父さんのお孫さん、桜井さんにまで、あんな……」 すると今度は、先程までナツメを見て悲鳴を上げ逃げ惑っていた三毛猫がおずおずと応えた。 「本当はあんなことしたくなかったんだよ……、でも仕方なかったんだ。この家を僕達は守らなきゃいけなかったから」 「ジイさんの死に際の言葉だ、この家をずっとこれから先……自分がいなくなっても俺らに守って欲しいって言ってたんだ。家族と過ごした大事な家だから……ってな」 「そうしたらじっちゃの葬式ん時に、この家潰すかもしれねって坊ちゃん達言ってたんだ」 「なんか……むつかしい話だったけど、売りに出してもこの家古いから、住む人が来ないかもしれないって。だったら、いっそおうち壊した方がいいかもって……坊ちゃんが」 「人間の都合を捻じ曲げる事に抵抗は勿論あったで御座る、それでも。拙者らにこの家を託し死んでいったあの方の願いをなんとしてでも守り抜きたかったので御座る。」 「悪い事をしてるって自覚はあたし達にもあったわよ」 澄ました女の声で鶴が言い、隣にいる亀が縦に首を振る。 「じっちゃは僕達の恩人だったから。だから……、じっちゃが天国で安心できるようにこの家を壊されないようにしたかったんだ」 猫が言い終えると、般若面の男が彼らを一瞥し、ナツメに視線を戻す。 「この家で騒動を起こしていたのには、そういった理由があったからなのだ。私達とて好きで人を脅かしていたわけではない、それだけは知ってほしい。だが、貴女と共にいた人には、このような言い訳は通用しないだろうな」 「あ……」 「良いのだ。情が欲しいわけではない。私達は心を持っていたとしても本来ならそれを主張せず物としてそこにいなければならない。そんな規則を破り、人々の混乱を招いたのだ。然るべき罰は受けるべきなのだ」
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