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応接間に飛んで戻ると、阿建が薄橙色の旗袍を摘まみ上げていた。
「ここにも一枚あったけど」
黒ずんだ太い指が絹地の肩を掴んでいる。
「それ、もらった服なのに!」
私は服を引ったくって阿建が摘まんでいた辺りを叩いて払う。
生地に目を近付けて、汚れが残っていないか確かめる。
「だったら、そんな大事なもん、こんなとこに置いとくなよ」
阿建はそう言い捨てると、小明の手からマッチ箱を引ったくって、自分の煙草に火を点けた。
「長椅子の上にそんなのが一枚きり広げてあったって、カバーか膝掛けかと思うよな?」
阿建は厚ぼったい唇をすぼめて空々しく紫煙を吐き出すと、小明に念を押した。
小明はうんともすんとも言わずに、代わりに自分も胸ポケットから半ば潰れた格好になった煙草の小箱を取り出す。
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