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羞恥
「……今日の舞台はつまんないわね」
僕の隣に座っている女がポツリと呟いた。
女の方を見てみる。
長い黒髪。それと同じぐらい濃い闇色のサングラスからその表情はよく見えない。
けど、その横顔にどこか見覚えがあった。
いつ、どこで見た女なのだろうか?
「……あの、失礼ですが、以前どこかでお会いしたことがありましたか?」
初対面の女にいきなり声をかける。
普段の僕なら絶対にしないであろう行為。
この空間の独特な空気が僕を変えてしまっているのだろうか。
女が目線だけを僕の方に動かした。
「あなたはどう? 今日の舞台? 面白い?」
女は私の質問に答えることもなく、質問で返す。
「ま……聞くまでもないかな……」
女が私の方に向き直り、ニヤリと笑う。
「だって……あなた、“ここ”……凄いことになってるもん」
言いながら、僕の胯に手を伸ばしてきた。
あわてて女の手を掴み、制すると女が可笑しそうに喉の奥でクックッと笑った。
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