格安物件。

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仕事場からバスを使い30分。 最寄り駅まで歩いて20分。 何処にでもあるような一軒家と 聞かされて、同僚の一之瀬帝の あとをついて歩く新條颯太。 「着いたたい。」 「ここ!?」 いやいやいや、 なんがそん辺にある一軒家ばい。 思いっきり豪邸やっちゃが!! 「そー。 もう藤堂さんには話つけとうし、 好きに住んでよかよ。」 「そげん事言われたかばってん、 ピーンポーン 「はい。」 「一之瀬です。 新條さんをお連れしました。」 「お帰りなさいませ。 ただいま門をお開けいたします。」 「話ば聞け!!」 大きな噴水、 カフェテラスを取り囲む薔薇園、 それはまさに颯太が思い描く お金もち像とぴったりの場所。 そんな家のインターホンを押し、 でっかい鉄の柵が音をたてて開くと 帝は歩く場所として敷かれた 煉瓦の上をスタスタ歩いていく。 恐る恐るついていくが、 木々から聞こえるせせらぎと、 小鳥たちの歌声、噴水の水飛沫、 何処からか聞こえるクラシック。 そんなものが一度にマッチする様な この場所に自分のような田舎者が 来るべきではないと感じ始めている 颯太。 こんな城を建てるくらいだ、 きっと執事のようにスーツが似合い、 ガチガチの敬語を話し、 そんな人はきっと頭の固そうで 融通が聞かないと相場が決まっている。 そんな人がこの屋敷の主ならばその時は この頭一つ頭を下げて無かった事に できないかと、自分勝手の妄想で 自らをどん底に落とし、その場をどう 終わらせるか、考えを巡らせていた。 ガチャ 「ここが玄関ホール。 右手の4室が客室、 左手の5室が使用人室。 扉が空いたら使用人室に知らせが入って 藤堂さんに連絡が入るようになってる。 ちょっと待ってよ。 すいません、部屋の鍵ください。」 「お帰りなさい、 旦那様がお待ちかねですよ。」 「ありがとう。」 フロントのような所で帝は鍵を貰い、 正面の大きな扉に手をかけた。
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