格安物件。

3/17
5人が本棚に入れています
本棚に追加
/17ページ
ガチャッ 「ただいま。」 「よぅ、遅かったな帝。」 着物姿で出迎えたのは この家の持ち主にして、 住人の世話をしている藤堂啓。 「約束の時間より1時間早いですよ。」 「そうか?まぁいい。 お帰り、えっと……、新條颯太君。」 き、着物きちょる!? な、なんでやねん!! などとパニックになりながらも 一応頭を下げた。 「あ、いや、おっ、お世話になります。」 エントランスのような造り、 その場所を彩る華々と風景画。 左右から二方向に別れた階段に 中央壁に掛けられた巨大なテレビ。 憩いの場らしき場所に敷かれた 高級そうな絨毯に、アンティークの ローテーブルにソファ……、極めつけが 天井から吊るされたシャンデリア。 「君の部屋は右から上がって一番奥、 部屋の鍵と家の鍵はこれ。」 手渡されたのは鍵は普通の鍵よりも 差し込み口が長く、持ち手の所には 鈴蘭の紋章が彫刻されている。 颯太の知識上、映画に出てくる古城に 使われるような品物。 「食事は好きな時に食堂に行けば シェフが作ってくれるし、 前の日に言っておけば弁当もOK。 あっ、右下の一番奥の扉だな。 その隣がプール、 その隣が大浴場兼温泉。 その隣がペットルーム。 基本は自分の部屋で飼ってもらうけど、 遊ばせたい時は使うといい。 で、その隣がペット関係の倉庫。 左奥が俺の書斎兼部屋で、 その隣が資料置き場、 その隣が和也のアトリエで、 その隣が作品置き場、 その隣が応接室。 大浴場とかが苦手なら風呂とトイレは 部屋にあるし、模様替えをしたい時は 一応俺に相談して、予算組むから。」 指さしのみで説明され、 覚えられるかは謎。 「あ、あの……、何をなさってたら こんなすごい城に住めるんですか?」 突拍子もない颯太の質問に 啓は小さく笑った。 「ここにも俺の名前を知らない奴が 居るとは、俺もまだまだと言う訳か。」 「へ?」 間抜けな顔をする颯太に帝は ため息をつき、啓の隣に立った。 「藤堂啓さんは小説家だ。 主な書籍は大体ドラマ化され、 今、注目されている人だ。」 作家さん!!!!!!! 息してるっちゃよ!! 「どうぞよろしく。」
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!