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「シン!! シン!!」
どこからか部屋の中まで、俺の名前を呼ぶ声がした。
聞き覚えのある聞き飽きたとも言える祖父の声だ。
友達とプレイしてたゲームを一時停止して、部屋から座敷へ歩いて、縁側の戸を開けて顔を出す。
「何?」
祖父はすぐ目の前に居た。
「婆さん見らんかったか?」
と――神妙な顔つきで俺に聞いた。
祖父と祖母の家は、俺の家と(正確には親父)同じ敷地内に、建てられた別の家だ。
すぐそばにある。
「見らんかったぜ」
祖母は杖を着いて歩かねばならない位、足腰が悪い。一人で出歩くってのもほとんど無い。
そして、祖母を見なかった? と聞かれる事は今日が初めてだった。
祖父が祖母の行方が分からないて事は初めてなのか、今まで同じ事があったけど、俺に聞かなかっただけなのかは、分からない。
「玄関の鍵掛かってんだよなぁ」
手で頭を掻きながら、祖父は自分の家の窓や戸を舐め回す様に見る。
多分鍵が掛かってるか見てるんだろう。
「他の鍵全部掛かってるわ」
祖父の勘違いだろうと、俺は自宅の玄関で靴を履いて、祖父と祖母の家の窓や戸の鍵を見ながらグルリと一周した。
祖父の言う通り、全ての窓や戸の鍵は掛かっている。とは言うものの、それはいつもの事だと思う。
問題は玄関の鍵が掛かってるて事だ。
祖父と祖母の家は不用心にも夜以外は鍵は掛かっていないし、祖父と祖母が同時に家に居ない事は滅多に無い。
あったとしても、鍵を掛けない。不用心ながら――
昼間に玄関の鍵が掛かってるて事は、珍しい。
祖父は珍し過ぎると思ってるかもしれない。
「自殺してんじゃねーだろな」
聞き流せない事をボソリと呟く祖父。俺の心臓が大きく動いた様に感じた。
要するに――緊迫感とビビりだろう。
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