学園大陸アカデミア

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 この世界グランドクロスには5つの大陸がある。  一つが、北に位置する、魔族の住む魔界大陸メルヘン。  一つが、東に位置する、エルフ族の住むエルフの里。  一つが、南に位置する、荒れ果てた荒野に魔物が住む、アンダーグラウンド。  一つが、西に位置する、全種族の子供たちで人口の8割を占める学園大陸アカデミア。  一つが、中央に位置する、人間の住む大陸フロント。  この5つの大陸で世界は成り立っているという。 「教科書ですか?」  赤みがかった黒髪のセミロングの少女は隣で教科書を音読している少年に尋ねる。 「ああ、大陸移動手段なんて限られてるし、それに暇じゃない?」 「確かに、暇なのは認めますが……何故大陸についてなんですか?」 「なんとなく?」 「何故疑問形なんですか?」  少年は片手だけで器用に教科書を読んでいる。  あるはずのもう一方の腕は寂しげに袖だけがひらひろと風に舞っている。 「アウルさんはどうして学園に行こうと素直に思ったんですか?」 「別に義務だからしょうがないだろ、別に俺は我儘ってわけではないしな……」 「そうですか。ならよかったです」 「ん」  漆黒に染まった黒髪が片目にかかり、片方の目は見えていないが視線を教科書に戻す。  少女も暇だったので外を眺めることにした。 「ここでアルも常識を身に付けてくれればよいのですが……」  少女はそんな独り言を呟いていた。  どうやらもうじき到着するようだ。  学園大陸アカデミア。  国もなければ、身分も種族も関係ない大陸。唯一平等で巨大な学園。 「まもなく、学園大陸アカデミアですので、お忘れ物のないように……善き学園生活を」  アナウンスが鳴り響く。 「さて、行こうか……学園大陸。遺跡攻略へ!」 「えっ!」 1  アウルは教科書をパラパラと眺めながら、歩いていると後ろで何故か怒っている人が一名。 「やっぱり、まじめに学業を学ぶ気はないんですね」 「ナンノコトカナ……ボクニハワカラナイナ」 「なんで片言なんですか?」 「ナンデダロウネ……」  ジト目でこちらを見てくる少女。  なんだろうね、本当……気まずい。 「じょ、冗談だよ、ローラ。ただね、この大陸に来たからには遺跡とか見たいじゃん。ここの生徒にならないとこの島に入れないんだよ。まぁ例外はあるけど、どうやらシークレットの特権も使えないみたいだし」
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