恋の道 参

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◆◆◆◆◆ シンと静まり返り、夕暮れと共に薄暗くなった部屋の中に、ほとんど動かない影が三つ。 互いに無言のまま、どれ程の刻が流れていたのか…分からなくなって来た頃。 「…莉亜さん…大丈夫でしょうか」 「何だよ総司。起きてたのか」 唐突に口を開いた沖田に驚いた永倉はニヤリと笑い、凭れていた壁から背を離す。 「お前が珍しくずーっと黙りこくってたから寝てると思ったぜ」 永倉の言い様にムッとした沖田はふて腐れた顔で言い返す。 「失礼な。私だって黙る時は幾らでもありますよ。それにこんな時に平然と寝れる筈ありません」 「ヘッ。そらぁ悪かったな。莉亜は…まぁ、今医者が診てんだ。大丈夫だろ……」 言いながら尻すぼみになった自分の声に気付き、永倉は溜め息を吐いた。 「…莉亜ちゃん…無理してたのかな…」 そう言ったのは藤堂で、幼さの残る顔が泣きそうに歪んでいた。 藤堂の顔を見た永倉はチッと舌打ちし、ワシャワシャと藤堂の頭を掻き回す。 「ワッ!何すんですか新八さん~!」 永倉の手を掴んで放り投げた藤堂を軽く睨み、再び壁にドカッと凭れる。 「ったく…テメェらがそんな顔してもしゃあねぇだろうがよ!辛気臭ぇ!」 「とか言いながら永倉さんもかなり辛気臭い顔、してましたけどねぇ」 沖田の突っ込みにフンッと鼻を鳴らして答える。
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