恋の道 壱

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ハァ…と溜め息を吐くとヒョコッと覗く莉亜の顔。 『ッ!何だ?』 また!いきなり目の前に現れるなっての! 莉亜はニマッと悪戯っぽく笑った。 「さては…土方様も照れてはるんどすね?」 『……照れてねぇ』 「嘘や。絶対照れてはる!」 『照れてねぇ!』 ちょっと前までの重い空気を消し去る様に莉亜が笑い出した。 その姿を見ながら俺も口元が緩くなるのが分かる。 胸が温かい。 …コイツには敵わねぇな。 嘘みたいに俺の心を軽くしてくれた。 あんなに重かった俺の心を…。 『有難よ…』 クスクス笑い続ける莉亜を柔らかく見つめながら呟いた。 決して聞こえない様に。 「…へ?」 『いや…。さぁ、えらく遅くなったな。とっとと帰って熱い茶が飲みたいもんだ』 そう言いながら莉亜を促す様に歩き出した。 「あ!はい!そうどすね」 ニコと笑って付いて来る。 愛しい、と初めて想った。 莉亜の何に惹かれたのか、正直言って分からない。 ただ傍でずっと笑って居て欲しいと強く思う。 今は、俺に付いて来てくれるが…この先は―… いや、ヤメだ。 もう考えても詮無き事。 只、俺は進み続けるしかねぇ… 立ち止まる時が来るまでは。
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