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いつ見ても変化のない、ガキ臭い湿気た面。
…まるで、蝶みたいだ。
周りの奴等は、立派な成虫となって社会という大空に向かって華麗に羽ばたいていっているのに
俺だけは中途半端にサナギのまま、いつまでも葉っぱの上に取り残されている。
俺だけ時間の流れが止まってしまったかのようで、正直薄気味悪い。
いくら眺めたって同じなのは承知しているのに、諦め悪く鏡を覗く。
そして、また一つ深い溜め息を落としてから鏡を伏せた。
…俺は、いつまでこのままなんだろう。
いつになったら、身分証明なしで酒や煙草を買う事が出来るんだろう。
いつになったら、俺は社会的に認められるんだろう。
いつになったらーーー…
再び缶を手に取り、グイッと中身を煽る。
空になった缶を握り潰して放り投げ、フローリングに寝転んだ。
ぼんやり天井を見つめながら、天井を突き抜けたずっと先…
ここから遥か彼方上空にいるであろう親父に語り掛ける。
「親父…俺、約束果たせそうにないっぽいよ…」
一人前の男になれという、親父の願い。
残念だけど、叶えてあげられそうにない。
だって俺…一人前の男になる以前に、人として一人前になれそうにないんだ。
全然、なれる気がしないんだよ…
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