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そう思ったところでふと気付く。今の言葉を聞いて、すぐにレイラの反応がない。
視線だけで姿を確認すると、未だに隣の彼女から目を逸らしたままだった。今のやり取り聞こえてたのかなぁ、これ。
「レイラ」
「……はっ。し、試合終了!勝者はミズナです!」
少し小さめの声で呼び掛けると、視線を元に戻して終わりを宣言してくれた。
あまり服が汚れずに済んでよかった。それじゃ、とりあえず……。
「シルヴィアさん、あとはどうぞ!」
やることは勿論死神への引き渡し。
「えっ、いや、あの、ミズナ君それはやめ……」
「ふふ、ありがとうね、ミズナちゃん。たっぷりと、しょば……いえ、お説教しておいてあげるわ」
制止の声も虚しく、綾兄ぃの背後に現れたシルヴィアさんはそのしなやかな五指で綾兄ぃの頭を掴む。
そしてそのままボクの方に顔を向けると、
「ミズナちゃん達のお友達は、執務室の隣の部屋に居るからね」
と言ってボクらに空いた手を振りつつ、綾兄ぃをどこかへと引き摺っていった。転移じゃないところに怒りを感じる。
そのまま引き摺る音がなくなるまで見送った後。
「行こうか。二人とも待たせちゃってるし」
「そうですね」
先の惨劇を見なかったことにして訓練場から出た。
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