3人が本棚に入れています
本棚に追加
/10ページ
これは普通の世界。
ただ、
普通といえるくらい同じなのだが、
同じではない別世界。
もう一つの世界とでも解釈していただくと良いだろう。
時間はちょうど『22:00』。
やや遅い時間、これまた少し多い6両編成の赤い普通電車が駅に停まり人を下ろす。
こんな時間でも40人くらいの人がぞろぞろと電車の過ぎ去った後の踏切を越え、駅の改札へとでこぼこの列をなす。
その中に一人、ちょっぴり目立つ帽子をかっぽり被った黒いロングヘアーの女の子。
かなり物足りない胸の部分に高校のマークがはいったカッターシャツ、
金のチェックが交差する緑のネクタイ、
それに青いチェックのスカート。
(主に帽子と一部残念な部分を除けば)
やや普通の衣服に、
すごく普通の表情ながら
その中の約40人全員が老若男女問わずつい見てしまうほどの可愛らしさをもつ少女がいる。
志貴宮 カナ、彼女である。
これから彼女は何時も通り徒歩で、
住宅街→たんぼ→家という経路を約25分かけて帰宅する。
ここまでは何時も通り。
要するに―平凡。
途中の自動販売機で
ジュースを買うときと買わないときがちらほらあるかないかの誤差以外は高校に入学した一年生の4月から今現在、三年生の7月19日までが作り出した平凡の中だ。
ちなみに今日は自販機でお茶を買う、
そんな気分。
最初のコメントを投稿しよう!