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秋を彩った紅葉たちも、すっかりその役目を終え、地面に柔らかい絨毯を敷きつめる。
踏むとかさかさと音を鳴らし、私は子どものように何度もその上を歩いた。
柔らかい絨毯の上を歩くように穏やかな気持ちになる。
彼はそれでも同じ本を手放さない。
季節が幾度も景色を変えても、彼は同じ本を手放さない。
私はいつの間にか気付いていた。
彼の読む本はたった一つ。
同じ本。
彼は何度も何度も読み返す。
彼にとってそれはとても大切な物なのだろう。
彼と本の間に私が入る隙間など無いのだと、少し淋しくなった。
私は友達と同じ高校を受験すると決めた。
それ以上先のことは分からない。
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