ベンチに座る君の影

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白いシャツの釦を一つも外すことなく、皺一つ付いていないそれは桜の色に染められて、君はまるで桜の精のようだった。 さらさらと風に靡く彼の細い髪を、舞散る花びらが彩る。 彼はそれを払いもせずに小さな本の世界に入り浸る。 可愛らしい水色のブックカバーが掛けられた薄い小さな本。 男の人を綺麗だと思った、十四歳の春の日のこと。
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