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珍しく夕陽に染まる公園で彼を見かけた。
彼はやっぱり同じベンチで白いシャツ、手には水色のブックカバーの小さな本。
夕陽が彼の影を長く長く作り出す。
長く長くどこまでも長く伸びた彼の影はもう少しで私の足元に届きそう。
勇気を出して一歩踏み出す。
まだ届かない。
高鳴る鼓動が心地よく、もう一歩前へ。
あと少し。
私は彼に気付かれないように彼の伸びた影を踏んだ。
なんだか胸がどきどきして、嬉しくて笑った夏の終わり。
彼の額には一筋の汗が光っていた。
やっぱり彼も暑いんだと、もう一度笑った。
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