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六花は息を飲んだ。
陽光を集めた様に艶やかでさらりとした金髪が風になびき、
青い瞳は陽光のない雲の下でもきらきらと輝いている。
雪を載せたような白い肌はきめ細やかで美しい。
六花は手を伸ばし、努めて優しい物言いを試みる。
「そんな所にいたら危ないですよ。
早くこっちに」
少年は口角をきゅっと上げて微笑んだ。
「貴女こそこっちに来てみて下さい。
すごいですね、この国は。
黒い河の上を鉄の船があんなに速いスピードで走ってますよ」
…何言ってるの、この人?
この現代社会に道路も車も知らない人なんている!?
これは相当病んでる人に違いないわ。
でもこのまま放っておく訳には…
そんなことを六花が考えていると、急に手を引っ張られ、体が手すりを越えた。
六花は叫び声を上げそうになったが、少年は素早く手すりに六花を座らせた。
六花は涙目で少年に怒鳴った。
「死ぬかと思った!
早く歩道橋の上に戻りましょうよ!」
「死にたいと思ってたでしょ?」
六花は少年の言葉で一瞬全ての音が止まった気がした。
少年は六花を静かに見据える。
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