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そんな俺を、彼女は、うっとりしたような目で、見つめているように思えた。
もしかして……
その時だった。
「すみません。おしぼりが遅れて」
拓海が俺におしぼりを渡してきた。
何だよ。いい雰囲気だったのに。
「こりゃ、どうも」
俺は少し乱暴におしぼりを受け取った。
適当に手を拭いておしぼりを置くと、また拓海が俺に話しかける。
「望月さん、いつもはウーロン茶ですけど、今日はコーヒーでもいかがですか?」
さっきまで拓海の存在が少し鬱陶しいと思っていたが、その彼の一言でそんな思いも吹き飛んだ。
「え?バーでコーヒー?」
「えぇ。カクテルでコーヒーを使うこともあるんですけど、今日は良い豆が手に入りましたから。外は寒いから、ホットコーヒーでも」
コーヒーか。まさかこの店でコーヒーを飲めるなんて思わなかった。しかもコーヒーだったら、今の手持ちの金でも十分足りそうだ。
「あ、あぁ。じゃあお願いしようかな」
「ブラックでいいですか?」
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