望月祐希

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冷たい北風が今日も街を駆け回り、葉を落とした街路樹は、寒そうに体を揺らしている。 12月初日の午後6時、間近に迫ったイベントのせいで、街は赤や青、金色にチカチカしていた。 背中を丸めて家路を急ぐ人々の中、俺はその場に立ち止まって、ただその光を見つめていた。 次々と道行く人の肩がぶつかる。俺はふらついて、思わず倒れてしまった。 慌てて凍えた右手をポケットに突っ込む。 底に転がる、むき出しの指輪の存在を確認し、ホッとため息を吐く。 よかった。ちゃんとある。 あの人へのプレゼント。名前もまだ知らないあの人への。
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