序章~1~

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「な、なぁ、一馬……やっぱ俺には無理だよ」 「なにヘタレてんだよ、龍也! 実奈と絵美の仇を取るんだろ!」 「でもよぉ……俺、こんなもん使ったことねえし」 「俺だってねえよ!」  腰が引けている龍也と虚勢ながらも相手から目を背けずに対峙する一馬。  そんな二人に不敵な笑い声を上げながら近づいてくるベネツィアンマスクと黒いタキシードに身をくるんだ男。 「こんな素人が相手とはツイてるね! 君たち、さっさと僕に殺されてよ?」  何度もこんな経験をしてきたのか男の声には余裕が満ち溢れている。  一馬たちは不用意に近寄ってくる不気味な男に恐れを抱き、ジリジリと後ずさっていく。 「さぁて。君たちはどんな悲鳴を聞かせてくれるのかな?」  仮面の男はフェンシングに使うような細剣をビュンビュンと風を切り裂かせながら、軽い足取りで距離を詰めてくる。 「しゃんとしろよ、龍也!」  普段からは考えられないほど怯えている龍也を励ますが、効果は見られない。 「あはは、無駄無駄! 人に武器を向けるのって、想像していた以上に怖いでしょ? 君だって内心ぶるってんじゃないのかな?」 「うるせーよ!」 「声が震えてるね。図星ってとこかな?」 「ちっ! 龍也下がってろ!」  一馬はそう叫ぶと、意を決して仮面の男に飛びかかっていった。
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