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隣から空の皿が視界に現れる。もう食べたのか。自分の半分残っているチャーハンを眺める。
隣りを変に意識してしまって食べにくいし手が進まないし、段々食欲も薄れてきていた。
「さっきくらいの量でいいのかしら?」
「あ、はい」
「分かったわっ、あ!そう言えば、奈緒子からシュークリーム貰ったのよ!食べましょっ」
奈緒子とは葵のお母さんだ。母さんとは司のお母さんと3人で未だ仲良し。よく一緒に旅行などに行っている。
スキップまでしそうな程軽い足取りを眺め溜め息をついていたら、ツンツンと腕を突っつかれた。
「…食べないの?」
その声に意を決したように顔を向けると柚が俺を見上げている。
ゔっ上目遣い…。
「おーい?聞いてる?」
ハッとして苦笑を浮かべながら聞き返すと柚は俺の皿に一瞬だけ視線を向け「残すの?」と聞いてきた。
「あー…なんか食欲ないんだよね」
アハハッ…とごまかし気味に言えば「ふーん」とその残りそうな皿を見ていた柚の口が開いた。
「じゃあ頂戴?」
「えっいいけど…よく食べるね」
「美味しいじゃんっ……はい、あ」
一拍遅れて俺の脳内は大混乱に陥る。目の前には口を開けて待っている柚。
えっ………こ・れ・は・なんて状況!!?どうするよ!!俺ぇえ!?
スプーンを持つ手が小さく震えた。
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