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テーブルの上には湯気が立っている出来たてのチャーハン。その隣にはインスタントのコンソメスープが並んでいた。
「我ながら惚れ惚れするパラパラ具合ねぇ」
母さんがスプーンの上に乗るチャーハンをうっとり眺めている。それに俺は正面から冷たい視線を送るが気付かない。
「留美子さん本当に料理上手ですよね!美味しいです」
「あら、嬉しい事言ってくれるわねっ」
「柚、母さんを煽てないで調子乗るから…そう言えば母さん仕事は?」
俺の言葉にムッと頬を膨らませたのは目の前の人物。四十ピー歳のそんな表情見たくないと本気で思った。
「えー…あれ言ってなかった?今日本当はお休みだったんだけど、バイトの子がいきなり辞めたらしくて手が回らないって言われて午前中はお手伝いに行ってたのよ。泣く泣くね」
「聞いてないし」
「私も今日、輝が学校休みなんて知らなかったしぃー」
しれっとイラッとくる語尾で返してくる母さんに反撃の言葉は見つからなかった。少し悔しい気もするが俺は母さんの味付けに染まったチャーハンを口に含む。
……旨い。
「柚くーん。お代わり沢山あるから言ってね?お手伝いしてくれたしおばさん助かったわぁ」
誰かと違って。の一言は余計である。キッチンが狭くなると追い出したのはそっちだ。
「ありがとうございますっ。じゃあ頂きます。」
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