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「ああ…おかん!」
俺がそう言うと、ぺしっと軽く頭を叩かれた。
「おい、高橋までそれ言うなよ…」
「えー、俺もいつも思ってたよー」
「…なんか、すげぇ複雑だわ。」
また顔を顰めた松野くんに、おれは笑う。昨日のことがあって、少し気まずい気持ちもあったけど…んー、これは松野くんの優しさかな。
松野くんと話していると、陽介くんと伊藤くんの言い争いはヒートアップしてたらしく、珍しく冬馬の止める声が聞こえた。
「まぁまぁ、2人とも…これから2人でシーカヤック乗るんだろ?」
冬馬の制する声。…そっか、なんだかんだ喧嘩しながらも2人1組のシーカヤックは一緒に乗る予定だったのか。
喧嘩するほどなんとかってやつだよなぁ。
「陽介は大好きなよっしーと乗ればいいんじゃんー?ままにお世話してもらえよ」
「っ、そーかよ!確かに、よっしーとならお前と違って疲れねえし!お前は女子とでも乗っとけ!!!」
陽介くんのそんな言葉に、伊藤くんは本当に、背中を向けてどこかに行ってしまった。
そんな別れ方をする2人を初めて見た俺はおろおろと焦る。
「えっ、え、あれ、大丈夫なの?」
陽介くんの気持ちを知ってる俺は、気が気じゃない。…陽介くんがあんなこと言いたくて言ったわけじゃないってことは、痛いほどわかるから。
きっと、2人で乗れるの楽しみにしてたんだ。
「んー…、ちょっと大丈夫じゃねえかもな。」
松野くんは苦笑いを浮かべる。
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