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ー静寂ー
まるで僕らの意思ごと無視され飲み込まれていくかのような…
と、新が戸口に手をかける。さすがにそれはまずいんじゃ…
と、言おうとしたまさにその時、リュックに入れていたオレの携帯が鳴る。
班の緊急連絡係のオレだけが自分の携帯を持ってくることを許可されていた。
誰かがオレ達がはぐれてしまったことに気づいて、どこかからかけてくれたんだろう…情けないけどありがたい。
「番号の表示が…ない?」
汗だくの背中に、今までの人生で感じたことのないような冷たい感覚がざわざわと走った。
「…助けて……たす…けて…た……」
電話の向こうの声は電波が悪いのか途切れ途切れで知ってる人なのかどうかもわからない。
「そ…颯一郎!?」
新が悲鳴をあげた。
顔をあげたら、新が開けた引き戸の向こうは…
…闇…?
…無…?
…………?
………
どうにも表現のしようのない不気味な空間に新がふらふらと吸い込まれていきそうな気がして、反射的に腕を掴んだ。
「………?!…」
ぐらり、と足元が揺らいだ。
あっ…転ぶ!
と思って慌ててあと一歩踏み出した場所に…
地面はなかった。
………………
ドサッ!!
かなり長い時間をかけて、地面に叩きつけられた気がした。
右手に携帯を握りしめ、左手で新の腕を掴んだまま…
「痛って…悪りぃ…」
オレ、昔っからトロいし…何かマズったかな?
「いや、俺は大丈…夫……」
オレ達の下には土の地面があった。
剣道部エースの新が変な転び方してなきゃいい、と思ったけどセーフだったらしい。
舗装されていない、土の地面。
どこだ、ここ…
人の気配がして慌てて起き上がり、辺りを見回す。
さっきと同じ家並みと通りがそこにはあった。
だが…
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