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私は、今日も学校へ続く長い道を歩いていく。
―この春も私、加藤 鈴は見事 留年せず、進級を成し遂げた。
勉強した甲斐があったものだ。
おかげさまで高校二年生になる。
そして、私にはもう一つ転機が訪れた。
その転機というのは
高一の時からずっと片思いをしていた一つ年上の東堂 夏樹先輩に告白し
見事オーケーをもらったことだ。
去年の春初めて入学し、教室がわからなくなってしまった私に
気さくに声をかけ案内してくれたのが東堂先輩だった。
私はこの瞬間に、彼に一目ぼれしてしまったのだ。
気になって部活やいろいろな行事などを見回ったりしていた。
今思えば、ストーカーに思われても仕方なかっただろう。
そうして月日は流れ、今年の春、先輩に告白し晴れて恋人同士になれたのだった。
その情景を思い出し誰もいない路上で顔がふにゃりとにやける。
おっと、こんな事をしていたら変な奴に間違われる。
私は、浮かれて崩れてしまいそうになっている顔を引き締めて学校への道を急いだ。
玄関に着くと、急いでシューズに履き替える。一晩中影の中で眠っていたシューズはひんやりしていて、とても気持ちがいい。
季節は夏。
今日は特に猛暑で、カバンを持つ手に汗が滲む。
汗がとめどなく溢れ出してくるからか、ほとんどの生徒が制汗剤を常備しているほどだ。
―ちなみに香りは、グリーンアップル。りんごっておいしいよね。
それに、私は、夏が好きだ。
海ではしゃげるし、
花火大会とか楽しいし、(密かに彼氏との妄想を働かせる)
でも、何より私が夏が好きな理由…それは…
―夏樹先輩と同じ漢字だから
―ッキャッ、言っちゃった。
私は、熱く火照る頬を、冷たい両手で覆った。
私は一年生の教室のある4階へ行った。
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