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1.ブラックボール・アウト
おれが公園につくと、毬那(まりな)と縁美(えんみ)が砂場横にあるベンチに腰かけていた。
毬那(まりな)はこげ茶色の髪を2か所で束ねたツインテールをしていて、服装は短パンに袖なしのTシャツ。
上から半袖で薄着のパーカーを羽織っている。また、紺色の肩掛けカバンを持っていた。
縁美は黒髪の肩ぐらいまであるストレート、服装は首回りが広いTシャツにダメージ加工されたデニムの長ズボンだった。
手元には革で少し大きめの手提げカバンを持っている。
2人は雑談をしていた。
「毬那って、そういうとこ臆病なのね」
「うん、そうかもしれない――――あ、明夢(めいむ)君。こんにちは」
毬那が会話の途中でおれが公園に着いたことに気がづき、あいさつの言葉と共に手を振ってくる。
その毬那の仕草を見て縁美もおれが来たことに気づいたようで、おれの方を向くと口を開いた。
「明夢(めいむ)、来てたのね」
「……おっす。……って、縁美(えんみ)、来てたのね、はないだろ」
おれは縁美の反応の薄さに、思わず文句が飛んだ。
毬那がおれに同調する。
「ほんとだよ~。縁美、明夢君の言うとおりだよ」
縁美はそんなおれと毬那の態度を見て、不敵にほほ笑んだ。
「そうかしら。明夢、ごめんなさい」
口調から察するに、反応の薄かった台詞は、縁美が冗談で言っていたようだ。
そのことを理解すると毬那が頬を染めて苦笑いになり、つられておれも口角が上がった。
2人とのあいさつがすんだところで、おれは2人の腰かけているベンチのうしろにある花壇、その中へ入り、ベンチのやや右後ろにある木に手を頭の後ろで組んでもたれかかった。
都会の少し湿った風が頭上の木の葉を揺らす。
毬那と縁美は再び会話を始めていた。
聞き耳を立ててみたが、内容が聞き取れないほど、2人の声は小さかった。
おれが木にもたれかかってから少しすると、公園の入り口から、誰かが入ってくるのが見えた。
毬那がおれと縁美の方を見て口を開く。
「あ、縁美と明夢君、養太(ようた)君と羽陽(わよう)君が来たよ」
縁美が感想を漏らした。
「ほんとね。まるで兄弟みたい」
「……どうみても、羽陽(わよう)がお兄さんだね」
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