雪に捧げる鎮魂歌

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僕は、クリスマスが嫌いだ。 子供やリア充が楽しみにする日らしいが、その神経が理解できない。 クリスマスは、僕から大切なものを奪い取る。 全て。 総て。 僕の5歳のクリスマスの日、両親は信号無視の車に轢かれて死んだ。 その後僕と姉さんを育ててくれたじいちゃんもクリスマスに病気で死んでしまったし、ばあちゃんはその翌年の同じ日に車をスリップさせて崖から落ちてしまった。 そして去年、 姉さんは、買い物に行った先で通り魔に刺された。 今日はクリスマスだから、外に出ないでくれって行ったのに。 そろそろ、あの日がやって来る。 もう、僕には何も残っていない。 奪えるもんなら奪ってみろ。 ****** ………布団に入って眠っていた僕の耳が、不穏な音を拾う。 パチパチという、何かが爆ぜる様な音―――― 飛び起きた僕の目に飛び込んできたのは、赤とオレンジの海。 燃えて――燃えて。 まるで、奪うように。 僕から、僕を奪っていく。 ちらりと視界の端に映ったデジタル時計に表示された日付は、 子供が心待ちにする、 僕が大嫌いなあの日――――。
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