冬桜《パソコンver》

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7.  4月も中旬になると大学の授業も本格的に始まった。勿論ゼミもデザインの専門学校もスタートしている。就活も佳境。僕がついたゼミは若い教授のクラスで合宿や実習の多いところだった。翌週に10日間の合宿を組まれ、僕は慌てて店のシフトを変えてもらった。本当は店の規定では突然の休暇は認められないし、ましてや責任者代行のリーダー職がそんなことは絶対に許されなかった。常時、店に穴を開けずに安定して出勤し、正社員と同じ内容の仕事をこなすからリーダー職はシフトも時給も保障される。だから急に休みを願い出て、副店長を困らせてしまった。副店長はなんとかするって言ってたけど、きっと店長と副店長で僕の開けた穴を埋めるんだろうと思った。  僕は変わらず夜は副店長のアパートに出向いた。講義も始まったのに僕は寝過ごしてサボる日も出てきた。それでも彼女を抱きたくて、彼女をイかせたくて、通ってしまう。  合い鍵。副店長から初めてもらったプレゼント。プレゼントって言わないかもしれないけど、僕の宝物。真新しいのか輝いてる。僕がまだ幼稚園生だったころ、園庭で見つけたキラキラした石を思い出した。それから僕は石やガラスに興味を持った。僕が宝飾デザインを始めるきっかけになった石。僕だけのお宝を大発見した気分で、先生にも友達にも言わずにこっそりと通園かばんに隠した。持ち帰っておもちゃ箱にしまった。それと同じ感じがした。この鍵は僕だけのもの。僕だけの、皆には内緒の宝物。  その合い鍵を使って僕はいつも通り中に入り、副店長をキスで起こし、行為をしていた。彼女は吐く息と共に僅かに声を漏らしていて、この日もいつもと同じように僕の上で静かに揺れていた。途中、僕が僕の胸についた副店長の手をつかんで合図すると、副店長と僕の位置が逆転する。  僕も少しは行為になれて我慢出来る時間も長くなった。彼女が顔を歪める場所も分かってきた。僕はその彼女の弱い所を攻めて彼女の眉をしかめているのを見下ろしていた。
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