新たな生活の始まり

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廃墟同然の、崩れかかった部屋、不釣り合いの華美なベッドに眠る一人の青年、歳は22。 大学のレポート作成や就職難の時代に仕事を探すための気苦労の絶えない彼は、夢の中くらいは良い事に恵まれたのか成人男性らしからぬ、幼さの残る顔で幸せそうな笑みを浮かべながら熟睡している。 普段、彼が起床する時間が近づき、彼は僅かに目を開き時間を確認しようと腕を伸ばし、時計を探す。 「…ん?あれ、どこに置いたっけか。」 どれだけ探ろうといつも同じ位置に座しているはずの時計に手が当たることがない。 別の場所に動かしたのか、記憶を思い返しながら起き上がり時計のあるべき場所を見る。 「……!」 寝ぼけ眼の目をこすり、よくよく見ても時計はなかった。 その代わり、枕元には仰々しい一冊の本がとてつもない存在感を発揮して存在している。
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