5729人が本棚に入れています
本棚に追加
/105ページ
バタバタと走行風にかき乱される髪は二人ともそのままに、爽やかな潮風を受けながら車はひた走る。
「で、南に行くとは言っとったが……具体的に行先は決めとんのかいな」
「あー、ああ……悪ィ癖だぜそれ。旅っつぅのには基本的に目的地はあやふやなんだよ。ここ行きてェなーとか、思ってりゃそれでいいんだよ」
「そんなアバウトな……まぁミーシャが行きたい言うとった機械仕掛けのシェルター街もこっから南やし問題ないっちゃあ無いんやけどなァ……」
「ティアの故郷もな」
「なんや、行くつもりなんか?」
「……気は進まねェけどな」
そうしてだらだらと会話しているうちに、荷台のほうがえらく騒がしくなってきた。
楽しんでいる風ではなく、慌てているようだ。
「うにゃーッ! ツヴァイ、フェイト! 緊急事態にゃん!」
機械いじり大好き、猫耳尻尾のお姉さん、猫の人ことミーシャがバタバタと運転席に乗り出してきた。せっかくの海だからと黒のビキニ姿である。
「兄ぃ、帝国の戦闘機がこっちに向かってるらしい……!」
同時に乗り出してきたのは蒼い長髪、切れ長の涼しげな眼、感情乏しい表情の元共和国軍人佐官のコア=セリエ。珍しく慌てているようだ。
最初のコメントを投稿しよう!