第一章―新たなる旅立ち―

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バタバタと走行風にかき乱される髪は二人ともそのままに、爽やかな潮風を受けながら車はひた走る。 「で、南に行くとは言っとったが……具体的に行先は決めとんのかいな」 「あー、ああ……悪ィ癖だぜそれ。旅っつぅのには基本的に目的地はあやふやなんだよ。ここ行きてェなーとか、思ってりゃそれでいいんだよ」 「そんなアバウトな……まぁミーシャが行きたい言うとった機械仕掛けのシェルター街もこっから南やし問題ないっちゃあ無いんやけどなァ……」 「ティアの故郷もな」 「なんや、行くつもりなんか?」 「……気は進まねェけどな」 そうしてだらだらと会話しているうちに、荷台のほうがえらく騒がしくなってきた。 楽しんでいる風ではなく、慌てているようだ。 「うにゃーッ! ツヴァイ、フェイト! 緊急事態にゃん!」 機械いじり大好き、猫耳尻尾のお姉さん、猫の人ことミーシャがバタバタと運転席に乗り出してきた。せっかくの海だからと黒のビキニ姿である。 「兄ぃ、帝国の戦闘機がこっちに向かってるらしい……!」 同時に乗り出してきたのは蒼い長髪、切れ長の涼しげな眼、感情乏しい表情の元共和国軍人佐官のコア=セリエ。珍しく慌てているようだ。
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