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「いきなり来て、なんなんだよ!」
溜まりかねた様に声を荒げた藍。
投げて寄越した視線を受け止めれば、その言葉や声の荒々しさに毒気を抜かれた。
今更ながら、藍の性格を利用する狡いやり方を恥じる。
その時の俺は、確かに一旦退くつもりだった。
「理事長が風間にあしらわれた」と矢のように学園中に広がるだろうが、己の保身より藍の気持ちだ。
充電なら理事室でも可能だ。今までがそうであったのだから。
牽制は他の形で考えるとしよう。
悪いな、雅紀。武勇伝は幻に終わったぞ。
自嘲気味に喉奥で笑い、抱き込んで密着していた体を解放すべく離れようとした。
……のだが、驚くことに藍のツンデレは絶妙のタイミングで「デレ」を発動しやがった。
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