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私の祖母も持っていますが、切れ味の良い糸切り鋏は、人形製作の細かい作業で役に立ちます。
きっとこれは…… 」
雅美は哀しそうな顔で、上内の白いハンカチ上で光る凶器を見つめました。
「水来さん……
これは、水来さんのお母様が姫人形作りで使っていた糸切り鋏ではないですか?
裁縫道具は、人形に命を吹き込む道具です。
その大切な道具で人の命を取るだなんて……
きっと、天国のお母様は哀しんでいらっしゃいますよ」
雅美の言葉に、幸恵は地面に向かって頭を垂れます。
その瞳からは一筋の涙が零れ落ちていきました。
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