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仕事、仕事、仕事。
毎日は色も花もなく、それだけで過ぎていく。
たまには飲み会や合コンなんてあったっていいじゃない?なんて思ってみても、会社の同僚の女たちは揃って
「ごめん。彼氏と待ち合わせなんだ」
なんて言ってくれて、足早に帰っていく。
禿げた上司でもいいから飲みに連れていってくれてもいいのに…なんて思ってみても、
「高山、暇か?このあとあいているのか。そうか。じゃあ、よろしく。今日は娘の誕生日なんだ」
と、どこか照れた様子で私に残業を押しつけて帰っていく。
リア充共め。
爆発してしまえ。
何度、本気で思ったことだろう。
私、高山瞳子は今年で25になる。
地元から離れて一人暮らしをしながら、普通の事務OLなるものをしている。
そう。色も花もない生活を見てもらえばわかるとおり、彼氏は3年いない。
大学のときにはいた。
卒業間近に浮気をされて別れて、その後、出会いもなく今に至る。
出会いくらいどこにでもあるでしょ?とはよく言われる。
隣のオフィス、通勤電車、コンビニで食事を買う時の店員。
それを出会いと言えば出会いではあるけど、特に話すこともないし、声をかけられることもないし、出会いじゃないと言えば出会いじゃない。
恋愛したくないとは言わない。
どちらかと言えば、彼氏は欲しい。
同僚も上司もかまってくれないし、会社の外に友達が欲しい。
欲しくても、そう簡単に彼氏や友達なんてできない。
私はそこまで誰とでも親しくなれるような人間じゃないのだろう。
いつものように残業で遅くなって、残業で遅くなるたびに最近たまによく会う隣のオフィスの男前と二人きりのエレベーターに乗って。
会話をすることもなく、無言で。
息が詰まるような空間を抜けたあとは、まっすぐに駅へ。
降りる駅の改札に近いいつもの場所から電車に乗り込み、たいして満員ではなくても座る場所もなく、最寄り駅まで静かに電車で運ばれて。
降りたあとは、家までの道を歩いて、途中のコンビニで夜ご飯購入。
何も変わることのない毎日。
ただ、季節は冬で。
もうすぐクリスマスらしい。
コンビニの店員がサンタの服を着ていた。
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