第一章 第一節

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  その少女は、まさに天使のような存在だった。 通常よりも随分と高い位置に、ずらりと並べられた小さな窓から、陽の光が侵入して室内をオレンジ色に染め上げる。 しかしこの無駄に広い書庫の全てを照らすには、その光は余りにも頼り無い。 そんな薄暗い室内で、二人は出逢った。 薄い水色のクリスタルが嵌め込まれた、金細工の大きなアクセサリー。それを胸に輝かせた、光のように真っ白なローブを纏い、流れるような長い黒髪を揺らしながら、祈るように手を合わせて綺麗な顔を俯かせる少女。 彼女はうっすらと目を開き、そのライトグリーンに輝く綺麗な瞳で、目の前に立つ高校生くらいの少年を見つめる。 長くも短くもない髪を小刻みに揺らし、整った顔を引き攣らせるその少年は、片方の手に抱えていた本を落とし、開いたままの口をぱくぱくと動かして、大きく見開いた瞳で彼女を見つめていた。 美しく、可憐で、それでいてどこか儚げな少女。 男性ならば、守ってあげたいという感情に揺り動かされることだろう。母性溢れる女性ならば、その華奢な体を抱き締めてやりたいと思うことだろう。 そんな『美』を形にしたような彼女の背には、神々しき純白の翼が広げられていた。  
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