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「貴女は何故、図書館になろうと思ったのですか?」
ケトルから手元のカップにお湯を注ぎつつ、その女性は近くの少女に問い掛けた。
それを受けた少女はクスリと笑い、コーヒーで喉を潤してから答える。
「なんで……なんだろうね。多分、皆がしないような事をしてみたかったのかな。図書館になりたい、なんて荒唐無稽な願いでも、anotherは叶えてくれる訳だし」
そして少しだけ首を傾げると、可愛らしくはにかんでから付け加えた。
「まあ、色んな事を知りたかったから、っていうのもあるけどね」
少女の言葉に呼応するかのように、切り揃えられた特徴的なアッシュグレーの髪が揺れる。
そんな前髪を目で追いながら、カップにお湯を注ぎ終えた女性は少女の対面に腰を下ろし、問いを重ねた。
「ですが、他にももっと良い選択肢があったのではないでしょうか? anotherにおいては、貴女の病の事など問題にはならない訳ですし――」
「白ちゃん、私の病気の事は関係無いんだってば」
“白ちゃん”こと“白木 鷲座(シラキ ワシザ)”の言葉を遮ってそう言うと、少女は拗ねた子供のように頬を膨らませる。
「……失礼しました」
言いながら、鷲座はそっと頭を垂れた。
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