始まりと終わりは、似て非なるモノなり。

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「なあぁ~う、なぁ~う。」 閉じた瞼にざりっざりっと気持ち悪い感触が、ちょっとだけした。 耳元で鳴く黒猫に、『うるせぇ』と文句の一つも言いたかったが、口は呟く事すら叶わず、今まで生きてきた記憶の全てが、急速に煙りのように流れて行った。 その中でやはり強烈で鮮明に浮かんだのは、アイツの姿。 意識が真っ暗闇に支配された時、何故だか嬉しかった。 …やっと、終われる。 魂の安らぎとは、こういうモノなのか? 真っ暗闇での静寂がひたすら続くと、小さな点が中心に現れて、それが段々広がり点が円になり眩しい明かりが広がってゆく。 朝日より、真夏の太陽よりも眩しい光を放ち、一面が輝いて自分が吸い寄せられていく。 そして、魂の器から離れた俺の不確かな心で、一瞬だけ蘇った想い。 『俺はまた、何処かで間違っちまったのか…?』 ぐるぐるぐるぐる、渦巻いて戻ってゆく。 いつもこの時だけ、理由が解ってしまうんだ。 『何度繰り返しても永遠の眠りにつけない呪い』 正しい選択がどれかなんて生きている俺には解らず、何度も何度も繰り返し病に苦しみ、じわじわと訪れる死の恐怖を味わう。 これは《罰》?それとも《戒め》? ほら、眩しい光は暖かくなって、真っ白に…ただ真っ白になって、また[あそこ]に巻き戻る。 苦しみは続くのに、またアイツに逢えるのか…と馬鹿な想いが過ぎった。 ああ、此処は……。 そして、死の淵にいた俺は何もかもを忘れた。
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