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その言葉に、息を呑んだ。
しかし、良く考えてみれば、正木家ならレベル4のコードを閲覧出来る。
泉の顔を知っていてもおかしくはない。
「だとしたら、何だと言うんですか?」
まさか、泉を売ってくれと言われるのではないかと、過去の記憶を思い出して警戒する。
しかし、誠一さんは意外な事を言い出した。
「『始まりの5人』の情報が欲しいんだ。出来れば【剣】の情報を教えてくれないか?」
その言葉に、私と泉は顔を見合わせた。
なぜ、誠一さんが【剣】――鈴の情報を知りたがるんだろうか。
「理由をお訊きしても?」
「そうだな……。協力を頼んでおいて、何も言わない訳にはいかないか。実は、俺の……俺と浩二の母親は、【始まりの剣】に殺されたんだ」
その言葉に顔が青ざめる。
鈴が……誠一さんと浩二くんのお母様を、殺した?
あの優しい鈴が……?
いや、もしかしたら、私が本当の鈴を知らなかっただけなのかもしれない。
うつむいてしまった私に代わるように、泉が誠一さんの言葉に答える。
「それ、間違いなく【剣】の仕業なの?」
「……母さんが殺された後、犯人を探そうって事になったけど、親父はすぐに捜査を打ち切ったんだ。これ以上、【剣】の逆鱗に触れたくないって。親父は、レベル5のコードを見れるから間違いないと思う」
レベル5のコードで『始まりの5人』を確認できる父親が【剣】だと確信したのならば、ほぼ間違いないだろう。
手が震えて力が入らない。
「あんたはレベル5のコードは確認出来ないの? 出来れば、【剣】の容姿を確認したい」
「レベル5のコードを見るには親父の端末からパスワードを入力する必要があるんだ。でも、昨日の夜、ハッキングに成功して、何とか5人の名前だけは割り出した」
「名前……。それは、誰が何の能力か分かるようになってる?」
「いや、被験者の5人としか表示されなかった。本当は【剣】の個人項目を見たかったけど、時間がなかった」
「……その名前、教えてもらえる?」
「構わないが……君は知ってるんじゃないのか?」
「いいから、教えて」
泉が何をしたいのか分からないが、妙に誠一さんをせっつく。
誠一さんは、ポケットから折り畳んだ用紙を出し、それを見せてくれた。
そこに書かれていた名前は。
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