本物の王子様たち

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「そうですね、海の生き物はジェンナータも好きですよ」 「あ、ですよね。だってぬいぐるみも喜んでたし。…でも、ほらあれってほとんどルマンディオが作ってたから、僕も、会話の糸口になればって、それで…」 実際にはそんなつもりじゃなかったから、ごにょごにょと言葉が続かない。 だけどラファイエットはニコニコと笑っている。 (自分の子じゃなくっても可愛くって愛してるんだろうな…)ってわかる。 「そうだ、それなら相談に乗ってくれませんか?この本とこの絵本、どちらをジェンナータに読み聞かさるのにちょうどいいと思います?」 いきなり差し出された二冊の本は一方は古びていて厚い。だけどもう一方は真新しい絵本だった。 (あれ?でも…) 二冊を見比べたら、タイトルが同じだった。 『空からの勇者は王になった』 って。 空から?空からって… これはもしかしたら僕たちにも関係あることなんじゃない? 「あの、これ、どっちもタイトルが同じみたいだけど内容はちがうの?」 「いいや、こっちは古い伝記でこれはそれを基にした絵本だよ。」 「古い伝記…」 「あぁ。この国の建国史の礎というか神話かな。寝物語に丁度いいのは絵本なんだろうけど、そろそろあの子も本格的に教育が始まる年頃だろう?だから伝記にした方がいいのかなって。」 単純に考えたら勧めるのは絵本でいい。だけど… 「その読み聞かせってラファイエット様がやるんですか?」 「そうだよ。貴重な親子の時間だからね。…まぁ毎晩ってわけにはいかないから短い物語のほうがいいんだろうけど…続きを楽しみに待ってもらいたいっていうのもあるんだよね。」 本を見比べるラファイエットの瞳には慈愛が満ちていた。 あんな瞳の中に、自分も映っていたことは…あったのに。どうして今はそうじゃないんだろう。
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