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      そこまで狭くもないけど特別広いってわけでもなくて。二人で居るのは狭い。 俺は先にシャワーで体を洗い流してから足首程にまでお湯が溜まった浴槽に入った。別に髪とか今洗わなくても夜に洗えるし。 裕翔は小さくお礼を言ってから、頭からシャワーのお湯を被った。 別に裕翔に譲ったわけじゃないけど本人がそう思ったならそれでいいや。それに、裕翔が髪や体を洗っている時はゆっくり遠慮なく裕翔の事見れるし。 「裕翔、背中に切り傷あるよ?」 浴槽の中で膝を抱えて座りながら裕翔を見る。さっきは気付かなかったけど、綺麗な白い肌に赤い線が斜めに入っている。治りかけなんだろうけど痛々しい。 裕翔は慣れたようにシャンプーを手に取りながら答えた。 「映画の撮影した時に鉄パイプあたっちゃってさ。あんまり痛くなかったけどね」 「ふーん…」 また映画でるんだ…。 シャンプーの嗅ぎ慣れた香りが浴室を占める。呆然と裕翔の細い体を見つめた。 たまにこうやって何も考えず裕翔の事、隅々まで見るのが好き。おそらくファンの人が一番羨む行為だろう。たまに雑誌の中で裕翔がビショビショになってるのを見るけどそれとはわけが違うし。 「涼介のシャンプー使うの久し振りだなぁ。やっぱりいい香り」 「普段どんなシャンプー使ってんだよ」 「ホテルのだよ。地方のホテルとかまだ安いやつ使ってるからさ。髪がキシキシになるの」 「へえ…」 嗚呼好きだな。裕翔の事。 あんなに沢山の所で沢山の人と関わって沢山の経験してるっていうのに、出会った時と何も変わってない。勿論人として沢山尊敬出来る所もあるし変わった所はある。でも、根本的には何も変わってない。くだらない事を楽しそうに話してくれる所とか。好き。何気無い所に好きを感じる。  
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