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瞳を揺らし、俺を見上げる黒い瞳。そして見下ろす俺。
「ゆ、悠ちゃんーー」
「ん?」
「ち、近くない?」
「そう?」すっとぼける。
「うん、す、すっごく近いと、思う」
困っている様子が可愛すぎて、わずかに傾けた顔で
「嫌なの?」わざと、そう問いかければ、
理子がギョッとして、慌てふためく。
「えっ、そんな、嫌だなんて、嫌なわけない、けど……、心臓は、今にも壊れそうです」
白旗をあげる。
「フッ、そっか」壊れちゃえばいいのに、俺の中の加虐心が急激に膨らむ。
「こっ、これは……いったい、なっ、何です、か?」オロオロと瞳を揺らす理子。
その表情が、俺の中の何かをかきたてる。
これが、好きな子をいじめたくなる心境って、やつか? って、俺はガキかよ……。心の中で呆れながら呟くもーー、そんな自分を悪くない、なんてーー。
俺はニヤリと口角を上げ、理子に言った。
「待ってんだよ、」
「ふぇ?」
「理子の返事を待ってんだよ」
「……」
「早く、言えっ」そう、耳元で囁けばビクッと肩を震わせる。
ギュっと唇を噛みしめる、その仕草を視界に捕らえ、
「欲しいもの、何?」
吐息が耳にかかるくらいの距離で、俺はもう一度ゆっくりと囁いた。
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