最終章

79/88
7390人が本棚に入れています
本棚に追加
/974ページ
「ない、ないっ、ないですっ! 欲しいものっ! ありません!」 不必要なくらいに大声で叫んだ私。 次の瞬間、シーンと部屋が静まり返って、 あれ? ギュッと閉じていた瞼を恐る恐る開ける。 眉間に深いシワを刻み込んだ悠ちゃんが、なんとも言えない複雑そうな顔をして、私をジッと見つめていた。 あれ、私はまた何か返事を間違ったのだろうか……。 狼狽える理子。 「ないの?」 「う、うん……」 「ホントにないの?」 「えっ……、ない、です」あからさまに悠ちゃんがムッとした。 えっ、なんで? わがまま言ったわけじゃないのに? なんで悠ちゃん怒ってるの? 「なんでないの?欲しいもの……。 今まで、えっ? と思うような変なおねだりばっかりしてきたくせにっ、せっかくこっちが欲しいものあるか? って聞いてんだから、なんか言えよっ、そうだろ? なのになんでないとか言うの?」 「えっ、なんでって……」 私のおねだり? いや、お願い? そんなに驚くようなことばっかりだったかな……。ふとかすめた疑問。 変なところが妙にひっかかって、記憶を手繰り寄せようとしたら、 「すぐ自分の世界に入り込むな」 と、頭を小突かれた。
/974ページ

最初のコメントを投稿しよう!