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「ない、ないっ、ないですっ! 欲しいものっ! ありません!」
不必要なくらいに大声で叫んだ私。
次の瞬間、シーンと部屋が静まり返って、
あれ? ギュッと閉じていた瞼を恐る恐る開ける。
眉間に深いシワを刻み込んだ悠ちゃんが、なんとも言えない複雑そうな顔をして、私をジッと見つめていた。
あれ、私はまた何か返事を間違ったのだろうか……。
狼狽える理子。
「ないの?」
「う、うん……」
「ホントにないの?」
「えっ……、ない、です」あからさまに悠ちゃんがムッとした。
えっ、なんで? わがまま言ったわけじゃないのに? なんで悠ちゃん怒ってるの?
「なんでないの?欲しいもの……。 今まで、えっ? と思うような変なおねだりばっかりしてきたくせにっ、せっかくこっちが欲しいものあるか? って聞いてんだから、なんか言えよっ、そうだろ? なのになんでないとか言うの?」
「えっ、なんでって……」
私のおねだり? いや、お願い? そんなに驚くようなことばっかりだったかな……。ふとかすめた疑問。
変なところが妙にひっかかって、記憶を手繰り寄せようとしたら、
「すぐ自分の世界に入り込むな」
と、頭を小突かれた。
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