おんぶ

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その日、A君は友人のB君と会う約束をしていた。 待ち合わせ場所のファミレスに先に着いたA君は、B君が店にやってきたのがすぐにわかるように、外が見渡せる窓際の席に座った。 時間にルーズなB君は、この日も案の定待ち合わせ時間になっても現れなかった。 そこでA君は、窓から見える景色を眺める事にした。そして交差点を行き交う人を何気なく観察していた。 お父さんとお母さんに手を繋いでもらって、嬉しそうに歩く男の子や、仲良さそうなカップル、はしゃいでいる女子高生、様々な人が通り過ぎていった。 その大勢の中の一人にA君の目はとまった。 それは、老人をおんぶして横断歩道を渡ろうとしているスーツ姿の男性だった。 A君は思った。 「こんな時代に、親切な人もいるもんだ」 そう思った瞬間だった。 老人をおぶっていた男性の体が、宙を舞ったのは。
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