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高校生活は人生の中で一番長い期間だと言われるけれど、あたしはそうは思わない。
中学と同じように同じ部活に入り同じように練習を積み重ねて同じように大会に出てきただけ。
違うといえば試合における敵という相手が強くなったことと、寮生活が始まったことだろうか。
退屈といえば退屈で、充実してるといえば充実している毎日。
そんな平凡と言えるあたしの人生の中で、初めて非凡なことが起きた。
いや、この場合は-起こした-と言った方がいいのかもしれない。
「……」
上目遣いで見上げた先には青黒い髪の毛が少し逆立った男が困ったような表情でこちらを見ていた。
名前は市川一徒。
あたしと同じ野田学園に通う高校三年のクラスメイト…だった。
だったと言うのは少しおかしいか…まだ、卒業していないのだし。
おかしなことを考えているな…と自分でも思った。
思わざるを得なかった。
だってこんなに時間が長いんだから。
こんなに時間がゆっくり過ぎるのだから。
ほんと――止まってるんじゃないかと思うくらいに。
「……えっと…その…ほんとにほんとなのか?」
ここでやっと彼が口を開いてくれた。
問いかけのような確認。
今のままではその言葉が理解できないかもしれないから少し補足をしておこう。
彼の「ほんとうなのか…」、の主語はさっきあたしが行った彼への告白の儀式のことを指している。
そして彼はそのこと真実であるのかをもう一度確認しようとしているわけだ。
もどかしいことこの上ない。
いつもならすぐにそう言っている。言うだけでなく手を出している。
あたしの場合足のことが多いのだけれど、そんなことはどうでもいい。
どうでもいいと思うほど……あたしもまた、てんぱっているのだ。
「ほ、ほんと…。あたしは――カズのことが好き」
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