指先の温度

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誰もいない遊歩道を歩いて行く。 雪に白く霞むその先に、人影が見えて立ち止った。 一瞬、彼かと思った。 だけど、彼よりも高い背丈。 「……戸田君」 雪の舞う中、戸田君が立っている。 「……偶然……?」 「……なわけないだろ」 ゆっくりと近付いて、私は戸田君の前に立った。 「お前が誰かに傷つけられるんだとしたら、俺はそれを黙って見ていたくはないって言った。だから、追いかけてきた。なのにまた何もできなかった」 それだけ言って、身体の横で手をギュッと握りしめた。 「……私は、傷ついてなんかいないよ」 「……嘘だ」 悔しそうな顔をする戸田君を、私は見つめた。
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