吉田栄

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濃い匂いと共に纏わりついてくるのは、蛇のような視線。 「もう直ぐ新入生が入ってきますね。私、新入生を担当するのって初めてで不安で……。今日、相談にのってくれませんか?」 昨日はテスト内容について、その前は行事ごとについて。 他にも色々と理由を持ってくるけれど、よく性懲りなく理由を見つけれるね。 その継続力を他に回せばいいものの。 「相談なんてのらない。誰かに相談する前に、自分で考えてみたら?」 突き放す言葉と共に目を向ければ、現代語を担当している女の姿がそこにあった。 豊満な体をそのラインを見せるフィット感のある服を着て、髪も巻き化粧も念入りに施しているその女。 俺の反応に言葉詰めたものの、まだ何か言いたげに口を開いてこようとする。 ……が。 「権田さん権田さんっ!! それ、ぼぼぼ僕が喜んでのりますぅぅぅ!! なんなら権田さんに踏まれたいっ……」 「きゃぁぁぁ!! ひっついてこないでよ!! このセクハラ男!!」 「セ、セクハラ!? 違いますよ!! これはそんな犯罪の域に入るものじゃなくて、ボディタッチというスキンシップを図るものですっ!!」 「一緒よ!!」 ああ……騒々しくなってしまった。 権田、と呼ばれた女の背に飛び掛かってきたのは、癪なことに俺と同時期にここに来た男。 でも、相手にするのは面倒臭くて仕方ないから、眼鏡をかけ白衣を着ているその男に女を任せるとして、さっさと朝の集会を済ませ。 俺が受け持つ場所にと行こうか。 今日必要な書類等をデスクの上に並べると、横でぎゃんぎゃん煩い二人は放置し、連絡を交わす集会を終えると。 職員室から一番に出た。 後ろから女の声で待って、と聞こえてきたけれど、それを待つ義理は俺には無い。 誰かを待つ義理なんて……俺は知らないんだよ。 唯一知っているとあるのは……あれ、だけ。 あれの為にしか俺は待つというのを知らない。 ほんと俺はどうしたのだろうね? 捕らえれるのを散々待っていたせいか、あれを捕らえた今もふいに焦燥が募ってしまう。 あれは掴めない風のようなものだから、こう離れている間もふらりと……どこかにいってしまうのではないかと……。 俺らしくない、不安に駆られてしまう。
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