ふたりの、場所

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「春野」 「うん?」 「あれ、出して」 「アレ?」 「ずっと持ってろって言ったろ。まさか忘れたとかねーだろうな」 政臣がトントンと指で鎖骨のあたりを叩いて見せた。 「……あっ!ある!ちゃんと持ってる!」 その仕草でネックレスのことを言ってるのだと理解する。急いで首から外すと手の平に乗せて見せた。政臣はそれを受け取るとチェーンから指輪だけを抜き取った。 「ん。手、出して」 「え、あ、は、はいっ」 どちらの手を出すべきか分からなくて思わず両手を出すと、政臣は左手にそっと手を添えた。 久しぶりに触れた手の感触にドキリとする。薬指にゆっくりとはめられた指輪はピッタリだった。 「ちゃんと約束、守ってたんだな。入らなかったらどうしようってちょっと心配してたんだけど」 「なんで太ってる前提なワケ!」 「わりぃわりぃ」 ムカッとして政臣を見上げると、ふいに顔が近づいた。そして唇がそっと触れる。 何の前触れもなく突然キスなんてされたら、もちろん心臓は爆発しそうなくらいドキドキして、また泣いちゃうくらい嬉しくなるから、目を閉じて、政臣がそばにいる喜びを噛み締めた。
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