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「うっ、う……あぁっ…ん!」
「早速泣いてるし」
「だ、って!だって!!!本物、なんだもん」
「なにそれ」
いつも会いたいときには会えないから、写真を見てガマンしていた。会いたいという思いを募らせていた。こうして、抱きしめたいし抱きしめ返されたいと何度も願った。
だから、その願いが現実になって嬉しいんだ。
会えなかった分の時間を埋めるように僕は政臣にしがみついてわんわん泣いた。政臣はそんな僕を温かく受け入れるようにしっかりと抱きしめてくれた。
「……な、んでっ、なんで、政臣が、ここにいるわけ?」
「なんでって、だってここ、俺の家だもん」
「は!?」
「ああ、違うか。正しくは、俺と春野の家、だな」
サラッと言ったそのセリフをすぐには理解出来なくて、固まってしまった。
「俺たち今日から一緒に暮らすんだよ。おばさん何も言ってなかったんだな」
―――マンションに行けば分かるよ
お母さんが言ってたプレゼントって、そういうこと、だったんだ。
「き、聞いてないし!政臣は知ってたの!?」
「うん。て、言っても知ったのは卒業式の日だけど。聖司くんとおばさんとで、俺たちには内緒で一緒に住めるように話進めてくれてたみたい」
そ、そんな……。
「なんで今まで黙ってたわけ!?僕だけ知らないなんてなんか仲間外れされた気分なんだけど!」
「仲間外れになんかしてないっつーの。春野に喜んで欲しかっただけだよ」
ムスーッと怒る僕をなだめるように、政臣がポンポンと頭を叩く。
「嬉しくないの?春野は」
何でも見透かしたような瞳に見つめられれば、怒りなんてどこかに飛んでしまって、今度は愛しいという思いだけが支配する。
「嬉しいに決まってんだろ、ばか」
嬉しい……嬉しい……。
一緒に暮らそう、
それが僕たちの夢だった。また東京に戻れる。それだけで僕は十分すぎるくらい幸せだったけど、こんなに早く夢が叶うなんて思ってもなかった。
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